おれはもうおなかすいた(@複業薬剤師)
大女優、樹木希林さんが亡くなった。いつもADHDの記事ばかり書いてるけど、樹木希林さんの主治医を知っていることもあって、ネットで調べてたらなんかいろいろ気になったので、今回は樹木希林さんの記事を。
ネットの情報は本当に玉石混交。情報は一人歩きすることを実感した。
樹木希林さんは鹿児島のUMSオンコロジークリニックでがんの治療を行っていた
樹木希林さんはがんの治療を行っている病院をメディアなどで公表している。
樹木希林さんががん治療をしているのは、九州の最南端、鹿児島にあるUMSオンコロジークリニック。
UMSオンコロジークリニックは、「四次元ピンポイント照射」という、放射線治療ではあるけど、より放射線治療の効果を高めるにはどうすれば?を考え抜いた独自の理論で治療を行うクリニック。
四次元ピンポイント照射については、UMSオンコロジークリニックの院長である植松稔先生が過去に日経ビジネスで語っているので、こちらを参照してもらえればと。
四次元ピンポイント照射のような独自の治療法は国が定めたものではないため、保険は効かない。つまり、UMSオンコロジークリニックは自由診療のクリニックである。
日本は国民皆保険が整っているので、基本的に3割負担で病院を受診できるよね?だから自由診療ってあまりなじみがない。美容系とかアンチエイジング系の病院やクリニックに自由診療のとこは多い。
で、いわゆる保険適応の治療をしないということは、その世界ではアウトローとしてしばしば扱われる。すると、付いて回るのが、「叩かれる」ということだ。
樹木希林さんががんの治療を行っている、鹿児島のUMSオンコロジークリニックも怪しいとか、結構ネットで叩かれているのをみたことがある。
では本当のところ、怪しいクリニックなのだろうか?
ぼくはUMSオンコロジークリニックの院長である植松稔先生を知っていて、実際に食事をしたりもするんだけど、すごく気さく。
ネットで叩かれる理由は、標準治療から逸脱しているからで、叩いている記事を読んだこともある。でも、そのネットで叩いている人たちは実際に植松稔先生に会って話して、どんな人かをみて叩いているわけじゃないんだよね。
植松稔先生に実際に会って話してみると、批判記事に書かれているような人じゃないことが1回目でわかる。
植松稔先生が標準治療であるガイドラインを重視しないってのは合っているけど、重視しないだけで現代医療を否定したりはしない。
この「現代医療の否定」ってすごく大事な部分で、トンデモに走る人たちは現代医療を否定する。そこから自分たちのビジネスを構築するために。
でも植松稔先生は、ガイドラインで一律に決められた抗がん剤を使うことに否定的ではあるものの、必要な抗がん剤を悪だからやめましょうと言ったりはしない。
抗がん剤が必要な患者さんには適切な病院を紹介して、抗がん剤治療をしてもらっているそうだ。患者さんの背景や、状態、人生観などあらゆる要素を踏まえて判断するのだろう。
ぼくは植松稔先生と何度も直接会って話しているから、批判記事を読むと違和感を感じる。
「あぁ、この批判記事書いている人、本人に会ったことなく書いているな」
って。
標準治療から逸脱する治療法で、怪しいものは確かに多い。小林麻央さんで話題になっていた、酵素風呂とかは、藁にもすがる思いの人をだますビジネスだよねと自分も思う。
だから、標準的でないものをみるときに批判的な視点を持つことは大事。でも、なんでも否定しちゃっていいかといえば、そんなことはない。自分の頭でちゃんと考えないとね。
ちなみに小林麻央さんも、UMSオンコロジークリニックで治療した……とネット記事に出てくるけど、そんな事実はなく、植松稔先生も呆れていた。
それで、樹木希林さんが鹿児島のUMSオンコロジークリニックで治療したこと、植松稔先生を主治医に選んだことは、ぼくはすごく納得できる。
ちなみに植松稔先生は、ちょっとADHDっぽい要素を感じる部分もある……いい意味で、「普通」では全然ない。
さらに、植松稔先生は今や過激派で知られる近藤誠先生の弟子で、近藤誠先生の近藤イズムを継いでいる……なんて記事も読んだことがある。
これは実際のところ、ほんの少ししか当たっていない。
慶應義塾大学放射線科で研修医のときの指導医が、後に過激派として一躍有名となる近藤誠先生だったそうだ。
近藤誠先生が指導医だったときの話は、滋賀医科大学の同窓会ページである、湖医会のホームページに植松稔先生が自ら寄稿している。
植松稔先生が言うには、当時は近藤誠先生もすごく優秀な人だったそうだ。でも、なぜか現代医療を否定してし、トンデモに走ってしまい、自分としても残念だと植松稔先生は言っていた。
情報ってどうしてか、誰かの都合のいいように一人歩きしてしまうものだよね。
大腿骨骨折からの寝たきりは死亡リスクをあげる
さて、樹木希林さんは8月に大腿骨骨折をしたって、ニュースになっていた。俳優の本木雅弘さんが、一時危篤状態だったって公表してたよね。
このニュースみて、樹木希林さんの周辺は本当に個性的な人の集まりだなぁって思った。夫はロックミュージシャンの内田裕也さん、長女は内田也哉子さん、長女の夫が本木雅弘さん。
もう超個性的なファミリー。
数年前に「SWITCH」って雑誌の表紙に、樹木希林さんファミリーが表紙になった回があるんだけど。この家族の雰囲気がなんかすごくいいなぁって、当時感じたのを覚えている。
参考
SWITCH Vol.22 No.10 SPECIAL]家族 内田裕也 樹木希林 本木雅弘 内田也哉子[FEATURE]松田龍平
これよこれ!
で、話が逸れてしまったけど樹木希林さんもなってしまった、高齢者の大腿骨骨折って、寝たきりへのファーストステップで本当に注意が必要。
たとえば10代の若者が1ヶ月、寝たきりで入院しても歩けなくはならない。体が元の状態に戻る。でもこれが高齢者だと、骨折による寝たきりが、歩けなくなる寝たきりにつながる。
高齢者の場合は、1ヶ月も入院して歩かなくなったら、もう歩けないだろう。
ぼくの祖父もそうだったけど、歩けなくなってから一気に衰弱した。歩けることって、QOLを維持するために、すごく大切。
樹木希林さんの場合、大腿骨骨折から寝たきりになり、死亡につながったかはわからない。
でも樹木希林さんは、がんの影響で通常よりも呼吸機能も低下している。全身麻酔だって、相応のリスクがあるわけだ。
死亡の引き金が何かはわからないけど、大腿骨骨折がなければ、まだ命はあったかもしれない。
樹木希林さんも公表していたけど、大腿骨骨折がなければ今秋は鹿児島のUMSオンコロジークリニックでがんの治療予定だったそうだ。
普段、介護施設に行っていてもそうだけど、高齢者の転倒にはスタッフさんがものすごく気を遣っている。それぐらい、高齢者の転倒からの骨折は怖いもんなんだよね。
樹木希林さんの死因は不明!死因ってちょっと変な概念
樹木希林さんの死因は、9月16日時点では不明だそうだ。
全身がんだ!なんて本人も言ってたくらいだし、死因はがんじゃないの?って思うんだけど、これはちょっとカラクリがある。
死因ってちょっと変だなと思うんだけど、必ず一つなんだよね。
たとえば……
がんの人が、がんの影響で骨がもろくなり、骨折。寝たきりで過ごすうちに、飲み込みが難しくなり、誤嚥をしてしまう。結果、誤嚥性肺炎で死去。
この場合の死因は、誤嚥性肺炎。
でもこれ変だよなぁって思うわけです。確かに直接の死因は誤嚥性肺炎かもしれない。でも誤嚥性肺炎に至るまでに、様々なことが起こってる。
そもそも、この人はがんにならなきゃ、誤嚥性肺炎にだってならなかったかもしれない。
そう考えたら、がんだって死因の要因としてかなり重要な位置付けで考えられるのに……って思うけど、この場合の死因はがんじゃない。
原死因の決め方は厚生労働省のHPにも書いてあった!このP.19ね。
樹木希林さんの死因は、不明だけど全身がんが死因だなんて言ってる記事もすでにある。
樹木希林さんの場合、がんは死に至った要素の一つだろうけど、大腿骨骨折がなければまだまだ長く生きられたんじゃないかなぁって、思うとすごく残念。
樹木希林さんの死はメディアの闇を浮き彫りにした
樹木希林さんの死を通して、メディアの適当さとか記事の信ぴょう性の低さとかをすごく感じた。たまたま、樹木希林さんが亡くなったニュースをみて、いろいろ調べてみたからだけど……なんか、ネット検索はこんなに適当なのか!?って驚いたよね。
誰でも情報に接することができる時代、何が真実で正しいか、自分の目を研ぎ澄ますためにも学ぶことって大事だなと思う。
樹木希林さんのようなスターが亡くなっていくのは、さみしいな。でも自宅での看取りとのことで、これは今の世の中なかなかできることじゃない。
最後に自宅でゆっくりできたことは、すごく幸せだったんじゃないかな。
おれはもうねむい。